起業準備の100日計画

「いつか起業したい」と思いながら、準備が進まないまま時間だけが過ぎてしまう。よくあることだと思います。そこで役に立つのが「100日計画」という考え方です。今回は、100日計画とは何かを簡単に説明したうえで、法人を設立して起業する場合に、100日間で具体的に何をすればよいのかを、ToDoのレベルまで落とし込んで整理してみます。
そして今回の計画には、ひとつ大事な軸を通します。100日目までに、たとえ1円でもいいので、売上をつくる。これを最大のゴールに据えます。理由は後ほど説明します。
100日計画とは何か
100日計画とは、ある区切りから最初の100日間で達成すべきことを定め、集中的に実行する計画のことです。
もとは米国大統領の就任後100日を成果の評価基準とする慣行に由来し、ビジネスの世界でも、M&A後の経営統合や、リーダーが新しい職に就いたときの最初の100日ですべきことを記したものとして使われています。定石は、期間をいくつかの段階に分け、早い時期に目に見える小さな成果を出しながら積み上げていくやり方です。
ポイントは、100日計画は「方針」ではなく「日付に紐づいた具体的なタスクの連なり」だということです。「いつか会社をつくる」ではなく「70日目に登記を完了させる」と決める。そうやって締め切りから逆算すると、毎日やるべきことが見えてきます。
今回は、ひとつのモデルとして、次の二つのゴールを置きます。70日目に法人の登記を完了させること。そして100日目に、最初の月次の締めを、売上が1円でも立った状態で迎えることです。
なぜ「初月の売上1円」をゴールに置くのか
ここで、先ほど後回しにした理由を説明します。
起業の最初の1か月は、設立手続きで驚くほど時間が溶けます。商号を決め、定款をつくり、登記をして、印鑑を準備し、口座を開き、届出を出す。やることが次々に現れ、気づけば営業活動を一度もしないまま1か月が終わる。これが、とても多いのです。
手続きはもちろん必要です。けれども、手続きをいくら完璧にこなしても、売上は1円も生まれません。会社という器が整っただけで、中身はまだ空のままです。そして「設立だけで1か月が終わった」という状態は、思いのほか心に効いてきます。収入がないのに、支出だけが出ていくからです。
逆に、初月に1円でも売上が立つと、景色がまるで変わります。金額の大小ではありません。「自分の事業は、ちゃんとお金を生む」という事実を、自分の手で確かめられる。この心理的な手応えが、その後の踏ん張りを支えてくれます。だからこそ、手続きと営業を最初から並行させ、初月の売上を計画の中心に据えるのです。
以下、この考えを軸に、4つの期間で整理します。
Day1〜20:事業の核を固める
最初の20日は、頭のなかの構想を、決めて・確かめる期間です。
- 「誰の、どんな困りごとを、どう解決するのか」を一文で書く
- 想定する顧客に近い人、5〜10人に話を聞く(「この困りごと、ありますか」)
- 競合・類似サービスを調べ、自分のものとの違いを言語化する
- 商号(会社名)の候補を3つほど出す
- 事業の目的(登記の「事業目的」に書く内容)をざっくり言葉にする
この20日のゴールは、「これは取り組む価値がある」という手応えと、会社の輪郭(名前・やること)が見えている状態です。
Day21〜45:小さく試し、設立準備に着手する
次の25日は、サービスを小さく形にして外に出しつつ、会社設立の準備に取りかかる期間です。ここから、営業と手続きを必ず並行させます。
サービス側のToDo(=売上づくりの種まき):
- 最小限の形(試作品・紹介ページ・提案書など)をつくる
- 想定顧客に見せて、反応をもらい、直す
- 価格を仮で決める(自分が続けられる値段に)
- 「お金を払ってでも欲しい」と言ってくれる最初の顧客候補を見つける
設立準備側のToDo:
- 商号を1つに確定し、類似商号がないか確認する
- 本店所在地・資本金の額・役員構成を決める
- 会社の実印(代表者印)を発注する(あわせて銀行印・角印も)。作成に1〜2週間みておく
- 会社形態を決める(株式会社か合同会社か)
ここで最初の顧客候補を見つけておけることが、後の初月売上に直結します。
Day46〜70:定款から登記完了まで
ここが手続きの山場です。会社を法的に成立させ、70日目の登記完了を目指します。
- 定款を作成する(商号・事業目的・本店・資本金・発起人などを記載)
- 株式会社の場合は公証役場で定款の認証を受ける(合同会社は認証不要)
- 資本金を発起人の口座に払い込み、払込を証明する書類を用意する
- 登記申請書類一式を準備する
- 法務局へ登記を申請する(申請日が会社の設立日になります)
- 【70日目】登記完了。登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書を取得する
なお、この手続きに集中する時期も、顧客候補との関係は切らさないようにします。「会社ができたら正式にお願いします」と一声かけておくだけで、登記後すぐに動けます。
Day71〜100:体裁を整え、初月の売上をつくる
登記が済んだら、事業を回す土台を一気に整えつつ、何より「最初の1円」を取りにいきます。
設立直後の届出:
- 税務署へ法人設立届出書・青色申告の承認申請書などを提出する
- 年金事務所へ社会保険の加入手続きをする
- (人を雇う場合)労働保険の手続きをする
事業の体裁を整える:
- 法人の銀行口座を開設する(登記簿謄本などが必要)
- 会計ソフトを導入し、初期設定をする
- 名刺を作成する(会社名・連絡先・印鑑を反映)
- ホームページを開設する(簡単な1ページからでよい)
そして、売上をつくる:
- 21〜45日目に見つけた顧客候補に、正式に声をかけて受注する
- 請求書のフォーマットを用意し、納品・提供したら請求書を発行する
- 入金を確認する(ここで初月の売上が1円以上立つ)
- 【100日目】月次1回目の締め。1か月分の取引を記帳し、請求・入金・支払いを確認する
体裁を整えるタスクと、売上をつくるタスク。この二つのうち、後回しにされがちなのは後者です。けれども、計画の主役は売上のほうだと考えてください。口座やHPが多少後ろ倒しになっても、最初の1円が立てば、その100日は成功です。
まとめ
法人設立を前提とした起業の100日計画を、ToDoで整理しました。Day1〜20で事業の核を固め、Day21〜45で小さく試しながら設立準備に着手、Day46〜70で定款から登記完了まで進め、Day71〜100で体裁を整えつつ初月の売上をつくる。
大切なのは二つです。ひとつは、「いつか」を「何日目」に置き換えること。もうひとつは、手続きに追われて営業を忘れないこと。70日目に登記、100日目に売上の立った状態で締める——そう決めておけば、設立準備と並行して、最初の1円を取りにいく動きが自然と計画に組み込まれます。
会社をつくることがゴールではありません。つくった会社で、初月から売上を生むこと。その小さな1円が、長い事業の、確かな最初の一歩になるのだと思います。
*(注:手続きの名称や必要書類、所要日数は制度改正や個別の状況で変わります。実際の進行にあたっては最新の公的情報をご確認ください。)*