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ブランディングとはなにか

「ブランディングをしたい」という言葉を、よく耳にします。多くの場合、そこで思い描かれているのは、ロゴを洗練させたり、ウェブサイトを美しく整えたり、色やフォントを統一したりすることです。たしかにそれらはブランディングの一部に見えます。けれども、それがブランディングの本質かというと、少し違うように思います。今回は、「ブランディングとはなにか」を、根っこから考えてみたいと思います。

そもそも、企業のブランドとは何か

ブランディングを語る前に、その対象である「ブランド」とは何かを確かめておきます。

ブランドは、ロゴや商品名そのものではありません。それは金銭や数値では簡単に表せない、無形の価値であり、消費者の心と頭に蓄積されていく心理的な企業価値だといえます。つまりブランドの正体は、目に見えるマークではなく、その会社に対して人々が抱く「印象」のほうにあります。

そして、その印象の源には、もっと深いものがあります。会社の根幹にある思想や哲学です。この会社は何のために存在するのか、何を大切にし、何を許さないのか。こうした、ふだんは表に出てこない不可視の領域こそが、ブランドの本当の中身なのだと思います。

ブランディングは「見せ方」。ただし、きれいに見せることではない

では、ブランディングとは何か。ひとことで言えば、その不可視の思想を、外から見える形で表現していく行為です。

ここで注意したいのは、「見せ方」と「きれいに見せること」は違う、という点です。多くの人が、ブランディングを後者だと思っています。けれどもデザインはブランドを視覚的に翻訳したものであり、明確な「ブランドの軸」がなければ、どんなに美しくても意味を成しません。きれいに整えること自体が目的になってしまうと、それはもうブランディングではなくなってしまうように思います。

この違いは言葉だけでは伝わりにくいので、ひとつ比喩を使ってみます。

化粧にたとえてみる

ある女性を、化粧で美しく見せることを考えてみます。やり方は、大きく二つに分かれます。

ひとつは、いま流行しているメイクを施すことです。雑誌やSNSで人気の色を使い、流行の眉の形に整える。これは、外側の基準に自分を合わせていく見せ方です。たしかに今っぽくはなります。けれども、流行が変われば古びますし、その人らしさが消えてしまうこともあります。

もうひとつは、その人がもともと持っている魅力——たとえば、強い眼力や、ふと見せる笑顔の表情——に合わせて、それが最も引き立つように化粧することです。これは、内側にあるものを引き出す見せ方です。流行とは関係なく、その人本来の美しさが際立ちます。

ブランディングは、後者です。会社の外にある流行や基準に合わせるのではなく、会社の内側にある思想や魅力を、最もよく伝わる形で引き出していく。これがブランディングの本質だと、私は考えています。

外に合わせる見せ方は、ブランディングではない

ここで、ひとつの線が引けます。

社会や市場の動向に合わせて見せ方をつくっていく行為——流行のメイクにあたるもの——は、実はブランディングではなく、マーケティングに近いものです。

整理すると、こうなります。ブランドの存在意義、つまりWHYを追求するのがブランディングであり、どのようにしてターゲットに価値を届けるか、というHOWを考えるのがマーケティングです。マーケティングは、そのプロダクトをどう見せるか、どう顧客に届けるか、市場をつくってより多くの人に伝えることにフォーカスしたものだといえます。

どちらも大切で、優劣の話ではありません。ただ、向いている方向が逆なのです。マーケティングは外(市場)を見て、そこに合わせにいく。ブランディングは内(思想)を見て、それを引き出してくる。この違いを取り違えると、「ブランディングのつもりが、ただ流行を追っていた」ということが起こります。

ブランディングとは、内なる思想を表現して印象価値を高めること

ここまでをまとめると、ブランディングはこう定義できます。会社の中にある考え方や思想を表現し、それによって人々が抱く印象の価値を高めていく行為である、と。

見た目を整えるのは、その結果として起こることであって、出発点ではありません。出発点は、あくまで「自分たちは何者で、何を大切にしているのか」という内側の問いにあります。

だから、基本はMVVに宿り、現場への浸透が問われる

では、その「内なる思想」は、どこに表れるのでしょうか。多くの場合、それはMVV——ミッション・ビジョン・バリュー——という形で言葉になっています。何のために存在し(ミッション)、どこを目指し(ビジョン)、何を大切にするか(バリュー)。ブランディングの基本は、ここに宿っているといえます。

ただし、MVVを掲げただけでは、ブランドにはなりません。本当に問われるのは、その思想が現場の一人ひとりの行動にまで行き渡っているかどうかです。経営層から現場スタッフに至るまでブランドの価値観を共有し、行動レベルで体現できる状態をつくる必要があり、部署ごとにバラバラでは、外への伝達も分断され、ブランド体験にブレが生じます。

立派な理念を掲げる会社は数多くあります。けれども、その理念が受付の対応や、現場の判断や、日々の小さなやりとりにまで滲み出ている会社は、それほど多くありません。ブランドの強さは、最終的にこの「行き渡り具合」で決まるのだと思います。

最後に

ブランディングとは、きれいに見せることではありません。会社の内側にある思想や哲学を、最もよく伝わる形で引き出し、人々の抱く印象の価値を高めていく営みです。流行のメイクではなく、その人本来の魅力を引き出す化粧。外に合わせるのではなく、内を表現すること。

もし自社のブランディングを考えるなら、ロゴやデザインに手をつける前に、一度問うてみるのがよいのかもしれません。「自分たちの会社の根っこには、どんな思想があるのか」「それは、現場の行動にまで届いているか」と。すべては、そこから始まるのだと思います。

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